投資と勉強代 

いきなりお金の話?

いえ、いえ、違うんですよ。
木曜日に起こった出来事について、
久しぶりに書きたくなりました。
タイトルも咄嗟に浮かんだくらい、それはもう強烈で、、、。



スロバキア中部は今週が春休みでした。
どこに行こうか楽しみにしていた私ですが、
月曜日から木曜まで、夫のラドに突然ブルガリアに出張が入りました。

しかし、ラッキー!今回は飛行機で行くとのこと。
(先月のルーマニア出張は車で行ってきました)
ということは、私が車を使えるじゃん!!

そして、大学生の長男は休みなしなので、
長女16歳とちびっこ軍団(12、8、4歳)の4人の面倒を私が見るってこと?!
うん。まあいいか!!

ちょっと待てよ。



長女のサラは将来パイロットになる!と、
ここ数年は自分の夢が揺るがず、
暇さえあれば、飛行機に関することを調べたり、
世界の飛行機仲間とチャットで、


いつ、どこの空港に、どんな珍しい飛行機が飛んでくるか、



などの情報を話している。


そしてここ数年、「アンネの日記」を読んだりして、
アムステルダムに行きたいと、常日頃から言い続けている娘。



本当は日本に連れて行きたいけど、
夫が不在だと、
家の家畜や、何やらかんやらと面倒を見るのは私の仕事。
子供4人連れても無理だし。


よっし!ちょっと豪華な春休みをプレゼントしよう。
多感な時期に、しっかりと目標に向かって全力で努力できるように、
空を飛ぶ楽しさを味わってほしい。

私からの彼女の将来への投資と思えば、まあ大した金額じゃない。
*ちなみに、東京―宮崎間よりもかなり安いそうです。


そんなわけで、月曜日、私は子供を医者に連れて行ってる間に
ラドとサラは出かけて行った。


それから毎日、サラとはFBのメッセンジャーで連絡を取り合っていた。

こちらに戻ってくるときは、ちびっこ軍団を連れて、ウィーンの空港に行くからね!
私たちはウィーンのプラターでジェットコースターにでも乗ろうかな?とか、
ブラチスラヴァの動物園に行こうかな?とか、
ブラチスラヴァのIKEAに行こうかな?とか、


私は私なりに、春休みの予定(ちびっ子バージョンを考えていたのだが、


「そんなお金のかかることしなくていいよ」だの、
「子供は家が一番いいんだよ」だの、
「マクドナルドで十分じゃない」だの、


どうもサラは、私が空港に来るのが嫌なの?というような虚しい返事しかこない。
それが、水曜日の夜遅くになってから、



「明日来るの?18:35到着だから」
「来たいのなら、来てもいいよ。でもガソリン代はママが払ってね!だって。」



と、一言メッセージがあった。
なんだよ、来て欲しいのか?どっちよ??
ラドからの一言も余計だし。


ちょっと腹立たしかったので、
無視していたら、木曜日の朝6時半にまたメッセージが来た。
寝てるって。春休みだってば。


8時くらいにチャットをして、
「片付けや掃除をして、アイロンして、行けそうだったら
携帯にSMSメッセージを入れるね!」
というところで、
会話が終わった。


それから、私は子供を起こし、掃除、洗濯、昼食づくり、サンドイッチづくり、
ナタンは地下に薪を運び、エステルとベンちゃんは「手伝い」のレベルではなく、
すったもんだしていたら、お昼を過ぎてしまった。

今回は子供たちのパスポートを持って行かないと、
ウィーンで問題が起きるかもしれないから、それも頭から離れず、
いろいろと手間どった。

13時だ!いざ、出発!!
そういうときに来るんだよね。義両親。
午前中に電話でウィーンに行くって、伝えたのに。。。



やれ、ベンちゃんの洋服が古い。
ジャンパーが汚い。
ママは目が悪いのか?見えないのか?
それとも、子供が汚らしくても気にならないのか?


「うぁお、いよいよ老人ロードまっしぐらだなぁ、、、。」と、
内心でささやきながら、着替えさせていたら、
義両親はどこかへ行ってしまった。
つまり、孫に「いってらっしゃい」を言うために来ただけなのだ。

私の運転で何かが起こり、
もしかしたら最後のお別れになるかもしれないと思ったのでしょう。





まあ、まあ順調にウィーン空港に到着。
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パーキングのチケットも18:22を印字。
普通は飛行機が着陸して、到着して、お迎えゲートに来るにも15分はかかるだろう!





でもね、会えなかったんですよ。


18:44に電話をしたら、
「もう、バスの中だよ。」

だそうで、、、、。

私は脱力、唖然。


子供たちも、「マクドナルドかIKEAに行こう!」ムードから、
一気消沈。


ブラチスラヴァの空港に待ち合わせを変更し、
難なく落ち合うことができましたが、

ただいまチューのあと、
ラドの一言でカチンときた。

「来てくれたのは嬉しいけど、浅はかだね。」と。

なんじゃそれ?

いや、英語だったのですが、これは書いてもしょうがないので、
私なりの解釈ですが、
愛を感じられない言葉に、波が引いてゆく音すら聞こえてきました。

これが、新婚時代なら、
「とにかく来てくれて嬉しいよ。ありがとう。チュー」でしょ?
「事故がなくてよかった。」とかさ。

ラド、ひどくない?


実際、飛行機の到着は18:25が予定で、到着したのは18:01。


「サラからの情報と違う」と、わざと指摘すると
(あくまでも冷静にですよ)


予想通り、
「だって、ママは来るならSMSを送るっていってたでしょ?」と興奮の反逆ムード。


うん。知っているよ。
ママのこと、信じてなかったんでしょ。
絶対に行くよ!って、出発前から言ってたのに。



ラドだってそうだよね。
私もサラにしか話をしていなかったから、
サラを通して、私に来るように仕向けていたくせに、

10分も待つことなく、到着ゲートに誰もいないから、
さっさとバスへ向かってしまったこの親子。




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本当に、悪いのは私なんです。
SMSのことなんて、忙しくてすっかり忘れていましたから。

じらしたくて、驚かしたくて、
「行けるかわからない」と答えたのではなく、
掃除や片付けをして、準備して、間に合うかな?
空港に到着してからでも、連絡する時間は十分あると、
油断していた私が悪かったのです。

携帯もカーナビ兼用で使うから、簡単に電話したりもできず。
安全運転ですから、しょうがない、、、。






携帯のなかった、20年前の物語ならわかりますよね。
しかし、これは三日前の話なんです。
今や、誰もが携帯を持っている時代で、
ベンちゃん以外、クレジットは入ってないけど、
エステルだって、ナタンだって、携帯を持っているんです。


これがタイトルなんです。
ズバリ、高い勉強代を払っちゃったなぁ、、、と。


娘に投資したと思ったら、
なんだよ、娘、ママのことまだわかってないね。

夫を喜ばせようと思ったら、大失敗しちゃったし。

その上、ガソリン代もパーキング代もかかってさ、
嫌な言葉をきいちゃて、

ああ、本当に高い勉強代であり、
なんだかちょっと悲しい日でした。













































ひと皮むけました 

いきなりビックリ!でなければいいのですが。

すごいタイトルで驚きましたよね??
いやいや、「なんのこっちゃ?」でしょう??


人生は長く、未開の地を踏みならしている最中の私。
1月には人生の坂道を下るがごとく、誕生日も迎えちゃったのに、、、である。



1月初旬に、恒例の豚の解体を終えて、「はぁ~」と安堵の夫と長男は早速風邪でダウン。
残された私は、後始末だけでなく、「燻製」にする肉に塩をまぶしたり、ラードとなった脂をどうするか?
なんといっても400キロ分の豚でしたから、それはもう大量の脂でいったいどうすりゃいいのよ?状態。

そんな文句を言ってるうちに、子供たちが週替わりに風邪にかかり、病院だの、学校を休むだの、
こっちは目がまわるような忙しさ、、、。

みんないいよなぁ~、明らかに風邪なんだもん。

私と次女のエステルくらいだよ!元気なのは!

「レモンティーにはちみつをいれてよ」とか、「鼻がつまるから薬もってきて、あっ!ティッシュもね」とか、
5人の子供のうちの2人ずつが、入れ替わり立ち代わり学校を休んでいた。
その上、いつものとおりの掃除、洗濯、3度の食事だもの、たまったもんじゃない。

なんといっても、一番下のちびっこベンちゃんが風邪で鼻水はすごいわ、熱はあるわで、ご機嫌ななめ
それでも、申し訳なさそうに、元気もなく「抱っこしてくれる?」なんて言われたら、40代後半ママでも、がんばっちゃうよ。


そんな中、1月30日に子供たちは通信簿をもらい、なんとか前期が終わったのですが、
休日が明けた2月3日の夜。

「あれっ?頭痛?」とわたし。積雪予報がでてましたけど、アレルギー体質の私は見事にこのウェーブに乗り、
目が痛い、鼻が痛い、頭が痛い、、、熱はなし、のどもプロポリス入りのスプレーで万事休す。

あ~あ、お鉢が回ってきましたよ。

2月4日と5日は頭痛でダウン。
風邪ならいいけど、これが中年のなんとかだったら嫌だなぁ~、なんて
アホなことを考えながら、天井を眺めて2日間。

2月5日は次男ナタンの誕生日なのに、、、。何かをしてあげる元気が湧いてこない。
ナタンは7日(土曜日)に友達を呼んでパーティーをすると、以前から宣言してたので、
まあ、家族の内輪でお祝いをすればいいのだけど、本当に立っているのがだるい。

「ごめん、なっちゃん。」

私の代替案は「宅配ピザ!」

家族が風邪の時は、召使に徹し、
自分が風邪になると、家族は私にまとわりつく。
それなら「お茶」の一杯でも持ってきてよ。。。。。

2日間で本当に唯一ナタンだけが、
「ママ、お茶とか持ってこようか?」

と、優しい言葉をかけてくれた。
(お湯を沸かしてくれたが、そのことを忘れてしまったらしくお茶は届かなかった)

家族の皆よ!忘れないからね、覚えていろよ!

長男の受験勉強、長女のバレーボール、学童、保育園、など忙しい中、
兄弟がそれぞれ助け合ってくれたのは救いであるのだが、

食事の支度は???できてない。
私も食欲がない。



宅配ピザは大成功!!


長男:「ママ、ピザの注文なんてできたの?すごいじゃん」
私:「なっちゃん、ごめんね。お誕生日なのに。何にも作ってあげられなくて」

次男:「ええ、ママ嬉しいよ!ピザのほうが、、、。おおっと。」

そういうことね。

夫:「これはどこのピザ?」
私:「この間おいしいって教えてくれた所に電話してみたよ」

夫の満足そうな顔が憎たらしい。

今まではなんでも作っていた私。手作り最高!
正直レストランの食事よりも、自分の作る料理のほうが美味しいと思っている私。

でも、ピンチの時はしょうがない。
空腹で夫をはじめ、子供たちが喧嘩になるよりは、お財布は痛いけど、
おいしいものを囲んで笑顔になるほうがいい!!


なんだか、そんな悟りを開いてしまった晩でした。

まあ、たまには外食とか必要ですよね。
そうじゃなきゃ、美味しいものを作る創作アイディアとかわかないし。

風邪をひいているときは、家族に看病してくれるだろうと期待するよりも、
やって欲しい事や要望をガンガンと命令したほうが、
自分の精神も健康になることを発見。
(変な納得なんですけど、これが我が家のぎりぎりの現実)


そんなんで、私、ひと皮むけたんですよ。うふふ。←微笑むしかない。








クリスマスなのに 

スロバキアのクリスマスを果たして何回迎えたことだろう?


ラジオから流れる音楽も、「またか」「今年もかぁ」と、歌詞すらちゃんと知らないくせに、
スロバキア語で歌えてしまうくらい、クリスマスソングにも慣れてしまった。


毎日、毎日がクリスマス。
西洋人はやっぱりクリスマスが好きなんだなぁ。


テレビをつければ恒例の番組だし。
「Mrazik」とか、「ホームアローン」シリーズだったり。
コカコーラのコマーシャルはそれほどお目にかからない。
なんてったって、コフォラというチェコのスパイスの効いた飲み物のほうが、
スロバキア人の郷土愛の精神をくすぐっている。


雪もなく暖かい日中を迎え、日光に出会える午後。
悲しいニュースが耳に入る。


27日。昨日のアフガニスタン。
自爆テロでスロバキア人の兵士二人が亡くなった。


日本ではニュースにもならないだろう。
クリスマスを家族とも迎えず、職務のために知らぬ土地で亡くなる無念さ。

テレビカメラは家族を映しだした。


クリスマス向けの映画や歌が聞こえるなかで、
このニュースだけがポッカリと浮かび上がった。


兵隊ではないのだが、迷彩服を着る日本の自衛隊。
盆暮れ正月、関係なく働くのだろう。

兵隊の格好をしたスロバキアの兵士。
クリスマスも関係なく働くのだろう。




知識のない私が語ることはできないが、
平和な風景の少し遠くで、こんな風景がひろがっていること。
それはやはり残念なことだけど、
現実の世界があるということを改めて思う。


うわべと見せかけにだまされてはいけない。
そう、一歩一歩自分の足で歩いて行くしかないことを、
もう一度、自分に言い聞かせる。

クリスマスにだまされてはいけない。








中年の女心と秋の空 

日本に一時帰国して気分転換や目からウロコを落としてきたのはいいが、
心に引っかかっているものがある。




それが最近、頭から離れることがなくなってきており、
自分が停滞前線にいるような沈んだ気分の日が続く。




そうなるとブログの話題に書きたい話題が浮かんでも、PCに向かって

「よっしゃー!」



というような元気がでてこない。
ヤバイな、私。



あんまりこういう人間じゃないんですけどね。








スロバキアの秋はあっという間にやって来て、あっという間に去ってゆく。
日本の紅葉が美しいように、スロバキアの紅葉も美しい。




この落ち葉が秋風に乗って、山の向こうに行く姿は、旅立ちみたい。
私はその黄色の風を見送っている。


もちろん、家の前を掃いているけど。。。毎日はできない。むなしくなる。
大量の落ち葉、明日もまたこのくらいなんだろうなぁ~。。。
昔みたいに、焚き火なんてできないし。(スロバキアでも一応禁止みたい)



初めてスロバキアの地を踏んだのが1994年の10月12日。

白い雲と青い空と太陽がまぶしい日に私はここに来た。
夕方、山間の家から上がる煙とその匂いに、一目ぼれした。


土曜日に初めて訪れたラドのおばあちゃんの家で、胡桃を拾った。
農作業の後に親戚たちが、紙でタバコを巻いて、おいしそうに吸っていた。

黄色い葉の落ちている山に入ってキノコを探した。
狼が出ないかいつもビクビクしていた私。

ハイジになったつもりで歩いていたら、大きな丸が牛のウンチだと知った。
この巨大ぶりは恐怖すら感じた。


落ち葉とどんぐりでできた「黄金の小道」が1週間でなくなること。




あれからたくさんの時間が流れたのだが、また振り出しに戻る。



なんで私はここにいるんだろう?




心につっかえているもの、のどから発したい言葉、それらを腹に溜めて、
なんで私は動こうとしないのだろう?



自己嫌悪?嫌、ちがうな。でも、思う。

大人だから一人で考えよう。
最善の方法を!




遠くにいるともどかしい。遠くにいるのが悲しい。



はぁ、考えても仕方がない。だからここで膨らんだ風船に針を刺して
私の心のつっかえを破裂させて、木っ端微塵にしたくて、つぶやいてみた。


紅、黄、茶色、緑も見える。
スロバキアの秋は、日本の秋と同じ色だ。













ヘビーな一日 

昨日は初めてひとりでガイドをやってきました。自己満足度30パーセント。

スロバキアについて説明したいことが山のようにあって、「流れるように」話ができない。
国の基本情報だけでなく、自然や国民性、生活や流行などがスラスラ説明できればいいのだが、大好きな(?)歴史になると、頭が整理されていないことに気がつく。もっと勉強して台本書いて、読んで、覚えて、女優?レポーターになったつもりで(おおげさではあるが)、、、、がんばんなくちゃなぁ!


まあ、これは私の目標です。独り言として「ぶつぶつ」とつぶやいてます。このごろ反省を書かないと忘れてしまうので。









さて、昨日は朝5時40分のバスで出発し、終わったのが夕方6時。それから3時間ほど電車に揺られ地元から30km離れた主要ステーションに到着。10時25分の最終バスまで1時間も待ち時間があった。


ちょうど5時半からは、

「スロバキア対フィンランド」のアイスホッケー世界選手権の第2ステージ


があったので、夫は車で迎えに来ることができませんでした。つまりビール片手に家族でホッケー観戦です。しょうがないですね。1年に一度の楽しみだもの。許しましょ。




結果、大接戦で負けてしまったスロバキア。残念でした。。。昨年のような奇跡が起こらず。
今年の試合は強豪チームが万年弱小チームに負けるという、なんとも不思議な年です。チェコもロシアも姿が見えません。

スウェーデンとフィンランドの共同開催で、明日はこの2国が直接対決です。どちらも負けるわけにはいかないのです。フィンランドがんばれ~!なんか愛嬌のあるチームなんです。




そんなわけで、最終バスを1時間ほど待つことになった私。



夜のバスターミナルは寒いし、暗いのであまりいい気持ちはしないのよね。酔っ払いのジプシーが多いところです。冬は暖房の効いている電車駅にジプシーがいるのだが、今は暖を取る必要がない。電車駅の構内には座る場所がたくさんあった。



唯一開いている売店のおばちゃんに、ホットドックを電子レンジで「チン」してもらい夜食を食べた。
販売機からでてくるカップに入ったインスタントコーヒーではなく、おばちゃんにトルココーヒーを注文し、熱々のコーヒーを飲んだ。



私は、インスタントコーヒーよりも、コーヒーの粉がぶつぶつと口に感じるトルコ式のコーヒーが渋くて好きだ


トイレもまだ開いていて、親切そうな白人のおばちゃんが管理していた。30セント払って家までゆっくりできるように、用事を済ませた。


昔はトイレットペーパーを手に2回巻いたくらいの分量を渡されていたが、最近はトイレの中にペーパーが備え付けてあり、必要に応じて使えるようになった。(すごいことです!)



いい加減、時間をもてあましたので、30分以上あるけどバスターミナルへ移動することにした。横断歩道を渡りいつもの番号の乗り場へ。やはり待合室は閉まっていた。




バス乗り場には3人が座れるベンチが4つある。
ベンチのひとつ目に、白髪で体格のいいビジネスマン風の格好をした老人が、大きなビジネスバックを横において腰掛けていた。手で顔を挟み、頭を抱えるような、なんだか疲れているのが明らかだった。酔っ払ってもいなそうだし。


スロバキアでこの年代の人がスーツを着ているというは、かなり珍しい。大学の先生なのか?個人事業主が契約に失敗したのか?なんだかそんな感じ。薄い紫のワイシャツだし。とにかく近づくのは申し訳ないような気がしたので、ひとつのベンチを挟み、3番目の蛍光灯の一番明るいベンチに腰掛けた私。


何かあったら、誰からも見える場所。ジプシーが物乞いに来ても、他の人から見えるように。私はそうやって護身する。


3人の女性30~50代(私と同じ年代だ!)のジプシーが機嫌よくやってきた。嫌だなぁ。
50セントでさえジプシーにはやりたくない。彼女たちのお酒代になるから。それなら自分の子供のお菓子でも買うよ。


ジプシーはしつこいから話かけられるもの嫌だ。不安だったが、彼女たちは私の前を素通りした。よかった。。。紳士の隣の2番目のベンチに3人が腰掛けたのが見えた。


しばらくすると、急に殴り合いが始まった。


「えっ?」



驚く私の視線は5メートル先を捉えた。
おじさんが白いセーターを着た一番年配らしい女性を拳骨で殴っている。




そして、ジプシーの若い二人の女性は、おじさんを止めるのではなく、反撃に飛び掛った。
まあ、男性対女性だから3対1でもおじさんに有利で、すぐに終わるだろう。



ポンセ、甘いよ!



女性たちは紳士の背中におんぶ状態、羽交い絞め。どこからともなく若い男のジプシーが加勢に走って来た。これはまずい。おじさんが殴られる回数も多いし、多勢に無勢。卑怯は許せない!!



「運転手さんたち、助けてー!警察を呼んでー!」と私は大声で叫んだ。携帯を持って警察を呼ぶ振りもした。警察の番号が咄嗟に思い浮かばない。演技だけど、これでケンカをやめてジプシーが去ってゆくと私は思い込んだ。




ポンセ甘いよ!それは日本のテレビドラマだって!!





「運転手さんたち~こっちに来てよ!!」と呼んでも、だーれも、本当にだーれも来てくれなかった。こっちを見ているのにもかかわらずだ。



最終バスまで時間があるからターミナルでバスを待つ人もわずか。ターミナルと運転手たちの中間くらい殴り合いは移動しながら続いていた。そこへ15,16歳のジプシーの男の子が自転車で通りかかった。


すると、3人組の女性の一人が


「ちょっとあんた、それを貸しなさいよ。」


と奪い取り、おじさんに自転車を投げつけた。





てっきり乗って逃げるのかと思った。まさか自転車を投げるなんて、私にはそんなアイデアさえなかった。





これがジプシーなんだ。全然日本人と感覚が違うのだ。それとも私がこういう場面に出くわしたことがないから?日本なら「やめろ」と、周囲が騒ぐだろうに。人だかりができるとか。



なんてこった。


私は未だにスロバキアのことを知らないんだ。







でも、黙って見ているのには限界がある。
やっぱり私はケンカ早い日本人だ。



「もうやめろー!やめて!もう十分。彼は年配者なんだからやりすぎだよ。」


ジプシーに近づきながら大声で冷静に言ったと思う。誰も私のことは眼中にはない。とばっちりもこなかった。おじさんは警察を呼びに走って逃げていった。私はバス乗り場に戻り、おじさんの荷物が盗まれないように見張に戻った。





ジプシーの中年女性が仲間に経緯(いきさつ)を話し始めた。


「何時にバスは出発するの?」
と、おじさんに尋ねたら、いきなり殴りかかってきたのだと。

どこまでが本当の話なのだろうか?私はその始まりを見ていないからわからない。
あの紳士の疲れた様子なら、その可能性もある。この年代の人ならば、とにかくジプシーに話しかけられるのが不愉快だとほとんどの人は言うだろう。


「ねえ、あなた方、本当にこのバスに乗るの?10時25分発よ」




地元のローカルのジプシーが何のためにバスに乗るのだろうか?無意味とはわかっているが、本当に乗るつもりなのかを聞かずにはおれなかった。

「乗るよ、乗るよ」と返答した彼女たちは明らかに上の空。どうでもよかったんだろうなぁ。


物乞いのきっかけのために紳士に話しかけた、または腕をつかんで話しかけたのだろう。


「汚い、触るな、汚らわしい」


紳士が怒って殴りかかってきたと。やっぱり女性が先に手を触れたのだろう。


「私がジプシーだから、バスに乗っちゃいけないのかよ?」


日本語だったら、そんな感じで叫ぶように、文句を言い始めた。

「自分たちがジプシーだからって」というのは、彼らの常套句だ。そうやって、白人が差別をしていて、自分たちは被害者なのだと主張する。










どのくらいの時間わからないが、二人の若い警察とおじさんが到着するまで5分くらいだったと思う。


同じ会話が始まった。


「あたしがジプシーだからって、殴りやがって。あいつが先に殴ってきたんだぞ。ジプシーはバスに乗る権利はないのかよ?」



ジプシーは大声で話す。「騒ぐ」のほうが正確な表現かもしれません。
スロバキアでは大声で話をすると「ジプシーみたいだからやめなさい」と注意され、日本では「大声で話す人は信用できる」と言われてる。(明るい発声、明確なしゃべり方、簡潔で大きな声は接客に向いている)


カルチャーショックだ。


時間は10時25分の出発時間に近づき、乗客も並び出した。みながジロジロとジプシー達を見るのだが、「またか」といった視線だ。


紳士は離れてもう一人の警官に事情を話していた。年配ジプシー女性は感情的になり、警官を叩きだした。仲間は離れるように言われ、自転車の少年は家に帰るように命令された。女性は手錠をはめられベンチに座らされた。


乗車するバスがやって来て、私も紳士もさっさと乗り込んだ。10時25分になった。運転手はそのジプシーと顔見知りなのだろうか?警官に向かって大きな声で言った。


「忘れるな。そいつらにも人権があるんだぞ。」



あれは嫌味だったのか?それともジプシーの身を心配して若僧の警官に警告したのか?
私にはどちらなのか理解できなかった。


ジプシーの女性たちは誰一人として、最終バスを逃す焦りの様子もなく、ターミナルからバスを見送っていた。
やはり最初からバスに乗る予定すらなかったのだろうか?


奥が深いなぁ。






ジプシーを知らない私には発見の多い出来事だった。そして追い討ちをかけるような出来事がまだ続くのである。


つづく